MICKA BOUZ

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いきなり回想(完結編)

 この記事は、前記事(「いきなり回想」~「いきなり回想(4)」)の続編です。




病院を出てすぐに彼に電話を掛けると、既に退社してこちらに向かっていると言う。
手術はしていない旨を伝えると、安堵感が電話越しに伝わってきた。
そしてとりあえず私のマンションのそばのファミレスで落ち合うことになった。
私はかなり早く着きそうだったので、2駅歩くことにした。
それでも私の方が15分ほど早く着いた。


  「いらっしゃいませ、おひとり様ですか」
  「いえ、後からもうひとり来ます」
  「喫煙席・禁煙席がございますが」
  「......禁煙席で」


まもなく彼が来て、私と向かい合わせに座った。
私は彼の顔を正面から見つめた。
途端に涙があふれ出た。
やっと泣いた。


  「怖かった。堕ろすの、怖い」
  「ごめんな、ひとりで怖い思いさせて」
  「なんでよ、なんで謝んのよっ」←高飛車
  「だって怖かったんやろ」
  「怖かったよ......怖かった」

  
  「こんなんもらったけど」←同意書
  「あぁ......」
  「コレ、いらん」
  「......んん」


  「もう一回やり直して欲しい」
  「えっ」
  「私とやり直してくれる?」
  「ええの?」
  「元に戻るんじゃなくて、最初からやり直そう」
  「うん、そうやな。ありがとう」


久しぶりに彼の表情が和らいだ。
そいうえば別れて以来、彼の表情はずっと暗かった。
それは私の前でだけではなく、誰の目にも明かだったらしい。


ところで、何故私は突然彼を受け入れる気になったのか。
産婦人科での体験で毒気を抜かれたというのもあるが、それだけではない。
彼がなりふり構わぬ様子で、相当かっこ悪い姿をさらけ出して、
私への想いを素直に表現してくれたからだ、と思う。
そしてそれに気付いた時、彼を頑なに否定し続けた自分の心の狭さを
恥ずかしく、そして心から申し訳なく思った。


翌日は平日だったが、彼は会社を休んでくれた。
そして2人で前日とは別の産婦人科に行った。
彼は恥ずかしいからと言って、車の中で待っていた。


前日の病院よりも小さくて古い個人医院。
私は診察台からモニターを見つめた。


  「おぉ、元気に動いてるな!お母さん分かるか?ここが頭でこっちが足や」


お母さん......私がお母さん。
この小さくて白くてウニウニ動いてるのが私の子供。
内診が終わって診察室で医師から話を聞く。


  「ああ、あんた結婚はしてないんか。おめでとうございます、でええんかな?」
  「はい」
  「よっしゃ、よかった。ほな大事にせなあかんで」
  「はい」


――こうして私は、彼と家族になる決心をしたのだった。





その後も大きな事件が起きました(というか私が起こしました)が、
その話を書くと私が一斉に叩かれて、2ちゃんでマッハ祭りが開催されかねないので
省略させていただきます(笑)


長らくお付き合いくださり、ありがとうございました。




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いきなり回想(4)

 この記事は、前記事(「いきなり回想」~「いきなり回想(3)」)の続編です。




翌日の仕事帰り、私は自宅の最寄り駅の2駅手前で下車し、
プリントアウトした地図を片手にスタスタと歩き出した。


......見つからない。
駅から徒歩1分って書いてあるのに。
焦って歩き回り、やっと見つけた時には予約の時間を少し過ぎていた。
気が付くと私の心臓は激しく鼓動し、呼吸も荒くなっていた。
手に持っていた地図は、手の汗を吸ってしっとりとしていた。
私は病院の前で深呼吸し、まだ仕事中であろう彼に電話をかけた。

  
  「お疲れ様です、マッハ(名字)です」←業務調
  「あ......はい、お疲れ様です」
  「今から病院行ってくるわ」
  「え?今どこにいてんの?病院って、今から......え」
  「終わったらまた電話するわ」
  「ちょっと待って、せめて一緒に行きたい」
  「えぇ?だってもう今病院の前やし。また電話する」


私は場所だけ伝えて電話を切り、もう一度深呼吸して病院の扉を開けた。
待合室には誰もいなかった。
診察室の中からかすかに人の声がする。
私は受付で名前を伝え、保険証を提出し、問診票を受け取る。
【既婚・未婚】の欄は、【未婚】に○を付けた。
【診断の結果妊娠している場合】の欄は、【中絶する】に丸を付けた。
問診票を提出すると、看護師はそれを一瞥してから、
「そちらに掛けてお待ちください」と無表情な声で言った。


待合室のソファに腰掛けると、視線を感じた。
壁に貼られたポスターの赤ん坊と母親だった。
私は恐ろしくなって、身を硬くして名前が呼ばれるのを待った。


名前が呼ばれ診察室に入ると、下半身に着けているものを脱いで診察台に座った。
冷たくて鳥肌が立った。
看護師が小声で何か言って膝にバスタオルを掛け、目の前のカーテンを引いた。
診察台が上昇すると同時に、足が自動的に開いた――内診。


  「8週目、3ヶ月に入ったとこやね」


私は震える声で返事するのが精一杯だった。
診察が終わると、医師は言葉少なに中絶の意思確認をしてから席を外し、
中年の看護師が中絶手術の説明をし始めた。


  ・中絶手術をする場合は前日処置を受けなければならない
  ・手術後は入院が必要だが当日中に退院できる


尚、手術の同意書に相手の男性の記名捺印が必要だが、
手術日までに提出すれば良いとのことだった。
つまり「今日処置すれば明日手術できます」ということ。
私はその日の処置は拒否し、同意書だけ持ち帰ることにした。
診察室を出て再び待合室のソファに腰掛ける。


  私は恐ろしいことをしようとしている
  堕ろしたらだめだ、絶対にだめだ


身体から血の気が引いてゆく感覚があった。
手足が冷たかった。


ごめんなさい!終わりませんでした......
次回は必ず完結させます!


というわけで、次回へ続く ε=ε=ε=ε=┏(; ̄∇ ̄)┛




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いきなり回想(3)

 この記事は、前記事(「いきなり回想」「いきなり回想(2)」)の続編です。




  「あ、今ピンポン鳴らんかった?」
  「うん、(元彼が)来たみたい」
  「ほんなら切るわ、またね」
  「ごめんな、ありがとう。ほんならまた」


彼女との電話を切った私はスックと立ち上がり、無言で玄関のドアを開けた。


私がひとりで泣いていると想像していたであろう元彼は、
私の淡々とした態度に安堵しつつも拍子抜けしたようだった。
私は友達との会話によって冷静さだけではなく、元彼への冷酷さも取り戻していた。


別れてからの1ヶ月間、私は彼に対して本当に冷たかった。
仕事で顔を合わせた時はテキパキと事務的に接し、
落ち込んでいる様子など微塵も見せず、でも目は決して合わせなかった。
しかし彼は、私との別れをなかなか受け入れようとしなかった。


酔って電話をかけてきて恨み言や暴言を吐かれた。
酔って私のマンションの前まで来て入室を要求、
拒否して締め出してもずっと外で立ち尽くしていた、しかも雨の中。
(基本的に酒が入らないと思い切った行動に出れないタイプ)


私はそんなことをされればされるほど怒りのボルテージが上昇し、
何度も逆効果だと教えたあげたのだが、聞く耳持たず。
はああ、こっちは原因不明の体調不良で具合悪いっつーの。
......とまぁこんな感じで、かなり冷酷な態度を平気で取っていた。


そんな私が、彼に助けを求めて半泣きで電話をかけたのだから、
これは一大事だ―――彼はそう思って急いで来てくれたのだろう。
しかし彼が私の部屋に到着した時には、元の冷酷な私に戻っていた。
彼は私にかける言葉を考えあぐねていた。
そして言った。


  「大丈夫なん?」
  「何が?」
  「泣いてたみたいやから」
  「ああ、もう平気」


私はそう言うとタバコに火をつけた。
そしてはっきりとした口調で言った。


  「私、言っとくけどうまへんよ。堕ろすから。お金は自分で何とかする。
   もう関わりたくないから」


彼が一瞬凍りついた。
そして弱々しい声で私に反論した。
しかし私が彼の要求など受け入れるはずがない。
彼にとってはまさに取り付く島もない状態だった。


そして、先刻火をつけたタバコを吸い終える頃には、またひとりの部屋に戻っていた。
その後インターネットで少し離れた地域の産婦人科を探し、
比較的小奇麗っぽい医院に電話をかけた。


  「堕胎手術のことでお伺いしたいのですが......」


翌日の夕方に予約を入れた。



次回(多分完結編)へ続く。






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いきなり回想(2)

 この記事は、前記事(「いきなり回想」)の続編です。




体調不良で会社を休んだ私は、倦怠感と吐き気を逃すべく
ベッドの上でゴロゴロしていた。
しかし一向に楽になる気配はなく、
むしろ時間の経過とともに空腹感も加わって冷や汗が出てきた。
こみ上げる吐き気を抑えつけようと、無理矢理タバコを吸う......不味い。


  どうしてお腹が空いてるのに吐き気がするの?


これが食べ悪阻の症状であるとはつゆ知らず。
とにかく何か食べなくては居ても立ってもいられない。
しかし当時の私はひとり暮らしの自炊知らず。
よろよろと立ち上がり、自転車で近所のスーパーへと走った。


何でも良いからすぐに食べられるものを探し求め、
引き寄せられるように惣菜コーナーへ近づいてゆくと、
揚げ物の匂いが漂ってきた。


きっ、気持ち悪い......
なんなんだ、この気持ち悪さ。
とにかくこんな場所からは一刻も早く離れなければ!


買物カートにつかまり、命からがら惣菜コーナーを離れた私は
その場に倒れ込んでしまいそうなほど弱っていた。


  まさか......
  でもそんな気がする
  私、妊娠してるような気がする


何故か突然そう思った。
それまでは胃腸科の医者に何を言われても、
「妊娠?ありえへんありえへん(笑)」
と、妊娠説なんか一笑に付していたのに。


私はよろけながら、そのスーパー内の薬局コーナーへ赴き、
何の躊躇いもなく妊娠検査薬を購入した。
結局食べるものはスーパーからの帰りに、コンビニでごんぶとを買った。


帰宅後、お湯を沸かしている間に妊娠検査薬の説明書を熟読し、
使用方法は完全に頭に入った(めちゃ簡単やけど)。
とりあえず検査の前にごんぶとだ。


食後、検査決行!
しかしいざとなるとなかなか勇気が出ないもの。
意を決して検査を実行したのは、その日の夜だった。


で、結果は――もちろん陽性。
尿をかけた直後にのマークがくっきりと浮き出た。


  なるほど、やっぱりね......


意外と冷静だった、不自然なくらい。
さてどうするか。
ああ、相手に知らせなければ。
別れてから初めて、自分から元彼に電話をかけた。
元彼が出た――「はい、もしもし......」


声を聞いた瞬間、抑えていた感情が一気にこみ上げてきて、
冷静だったはずの私は突然嗚咽し始めた。
いや、冷静だったのではない。
事実を受け入れることができず、思考がフリーズしていたのだ。

  
  「今大丈夫?」
  「うん、......何?」
  「私、妊娠してる」
  「え、嘘......」
  「どうしよう、どうしたらいい、今から来て」
  「すぐ行く」


既に取り乱して半泣き状態の私は、
元彼との通話切断後、今度は女友達に電話をかけた。


その友達には、私と元彼の別れの経緯をすべて話していたので、
私が泣きながら妊娠していることを告げると彼女は、
言葉を選びながら、私の気持ちが楽になる方向へと誘導してくれた。
そして私は徐々に冷静さを取り戻し、普通に会話ができるようになってきた。


その時――インターホンの音。
元彼が来た。




次回へ続く。




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いきなり回想

私たち夫婦の結婚のきっかけは、妊娠だった。
しかし妊娠が発覚した時、私たちは交際を解消していた。
別れてから約1ヶ月後に妊娠が発覚した。


別れてから妊娠に気付くまでの1ヶ月間、私は体調が悪かった。
お腹が張る・異常なほどゲップが出る・冷や汗・いつも眠い・・・
それ以外にも身体に変化が起きていた。
うどんが食べたい・タバコが不味い・空腹になると吐き気がする・・・


それは悪阻(つわり)のせいだったのだが、
妊娠などまったく予想していなかった私は、せっせと胃腸科に通った。
胃腸科では妊娠の可能性を疑われたが、私は完全否定した。
「それはないと思います」
何故断言したのか。
何故なら私はその数ヶ月前に産婦人科で、
不妊症ではないが、非常に妊娠しづらいと診断されていたからだ。
そして胃腸科で処方される薬を2週間ぐらい服用し続けた。


それでも私の体調不良は一向に回復しないので、
胃腸科の先生にそれを訴えたところ、
ストレス性の胃潰瘍になりかけているのかもしれないとのことで、
胃カメラによる検査の日程を決めた。


ストレス......思い当たる節、あるある!
当時、私の仕事は多忙を極めていた。
しかも物凄いストレスを伴うものだった。
しかしそれ以上のストレスの原因が私にはあった。
それは元彼(=オット)。


元彼は私との別れを受け入れることができず、大いに悩んでいた。
まぁそんなのは無視すればいいのだが、そうもいかなかった。
私と元彼は、仕事上どうしても顔を合わせなければならなかったのだ。


元彼の憔悴しきった表情と声。
でも業務は遂行しなければならない。
お互いに気まずい距離感だった。


  私がこの人を傷つけているのか?
  私もこの人に傷つけられたのではないか?
  顔を見るのもいやだ
  声も聞きたくない
  私だけがひどいのか?
  そうかもしれない
  でも別にそれでもいい
  この人とは結婚できない
  そう思わせたのはこの人だ
  私は訴え続けたのに
  でも私の気持ちに応えてくれなかった
  もうどうでもいい
  恨むなら勝手に恨めばいい


この状況は、私にとっては苦しかった。
そして胃カメラ検査の日が2日後に迫った日、
私は極度の体調不良のため、会社を休んだ。




次回へ続く。





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